小山工業高等専門学校の加藤岳仁教授は、塗布面に太陽光発電の機能を持たせる「発電インク」の研究開発を進めている。発電効率は開発当初の1―2%程度から向上し、10%を達成するめどがついた。現在は複数のインクを1本にまとめ、誰でも塗るだけで発電体を作れる研究開発に注力する。(栃木・辻本亮平)
発電インクはチタン系の金属や高分子ポリマーで作る。電極層や機能層、発電層と機能ごとのインクを塗り重ねると、太陽光発電を行える。
広く普及するシリコン型太陽光発電パネルのように大規模設備がなくても製造でき、次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」のように鉛を含まないため、リサイクルできる。評価試験では発電開始から9年後も8割の出力を確認しており、寿命でも優位性があるという。
今後は発電効率向上の研究を続ける。シリコン型太陽光発電パネルやペロブスカイト太陽電池の発電効率はおよそ20%以上だが、加藤教授は「これに負けないポテンシャルがある」と自信を見せる。
「スマートフォンに搭載し給電する」「窓で発電する」「シリコン型に塗り、寿命を延ばす」など多様な活用方法が想定される。2022年には発電インクの社会実装に向け、スタートアップのソーラーパワーペインターズ(栃木県小山市)を設立。幅広い企業との連携を進めている。